卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

卸売市場の課題

卸はなぜ配送機能を重視してこなかったのか

市場業界にとって、物流の「24年問題」が新たな重要課題となっている。 これまで物流問題は取り組みが強調されてはいても「やるべき」論にとどまる部分が大きかった。しかし働き方改革関連法に基づき、24年度からトラックドライバーの時間外労働の上限規制が…

非接触、非対面型物流と水産市場‐eコマースの取り組みはなぜ遅れたか

卸売市場はeコマースや物流への対応が遅れているとの指摘は昔からあったが、これは必ずしも市場業者の責任によるものではない。市場流通において「市場に来る人に売る」商物一致の取引原則が全面的に改められたのは2020年の改正卸売市場法施行からである…

コロナ禍 明暗くっきり 青果と水産‐青果は半数が売上増、水産売上増は2市場のみ

農水省はこのほど、8月末時点における新型コロナウイルスの卸売市場に対する影響とその対応策についてまとめた。 1.取扱高の状況 コロナ禍における卸売市場の令和3年1-6月は、青果が24市場、約半数の市場がコロナ前より取扱高を増やしたのに対し、水産は34…

公設民営化から民設公営化の動き‐公設と民営の接近

(農林リサーチ2021年9月号より一部転載) 改正卸売市場法の下で特徴的な動きがもう一点、公設市場におけるPFI(民間活力導入)による公設と民営の接近である。 改正卸売市場法以前にも、公設市場の民営化は進められていた。その「公設市場の民営化」と…

R&C売上1400億円卸に‐首都圏青果市場の激変加速②

人口15万人の上田市を拠点にした1400億円卸が誕生する 神明とともに、首都圏市場流通の新風となるのがR&Cホールディングスである。 R&Cホールディングスは、長野県連合青果と長印によって2015年10月に設立され、堀雄一連合青果会長が社長に就任した…

東京青果の神田青果グループ化の意義‐首都圏青果市場の激変加速①

狭隘化解消が大きな課題となっている大田市場卸売場 令和2年度売上2200億円と圧倒的なシェアを持つ東京青果は6月21日、東京神田青果をグループ化すると次のように発表した。 「2021年6月 18 日付で、東京青果株式会社(代表取締役社長:川田一光)は東…

市場再編の動き加速

2018 改正卸売市場法制定後の市場の動き 2021(R3) 0628 東京青果が東京神田青果グループ化 秋にも 2021(R3 )0428 連合青果がぐんま県央青果全株取得 0601 日付 社名そのまま 2021(R3) 0621 宮果と仙台中央青果卸売(仙印)10 月 1 日合併 仙台あおば…

富山市がPPP支援を国に要請

富山市はこのほど富山市公設地方卸売市場の再整備について、自民党下村政調会長に対し国の財政支援を求める要請を行なった。 富山市は大和ハウスなど8社の事業連合と、33年間のリースによるPPP方式による契約を2021年4月30日に正式調印している。 しかし、3…

富山市場方式はなぜ国の補助対象にならないか

富山市場方式とは、富山市公設地方卸売市場の再整備に当たって、富山市が出した「市場敷地全体に事業用借地権を設定し、事業者が市場施設と民間収益施設を一体的に整備した上で引き続き所有し、市場施設を市が賃借し運営を行う」方式である。(以下、事業の…

公設市場再編が焦点

改正市場法による卸売市場の認定数は中央市場が40都市、65市場であり、地方市場は911市場(公設143、第3セクター31、民設737)となっている。これに対し許認可制時代の令和元年度市場データ集の市場数(平成30年度)は、中央市場が40都市、64市場で、地方市…

物流と情報の重要性

春を待つ 前橋市内 馬場川通り 新たな物流政策大綱と食品流通合理化検討会 物流と情報が国の重点政策として取り組まれている。食品流通については農水省だけでなく経産省、国交省の三省共同による「食品流通合理化検討会の中間取りまとめ」が2020年4月に出さ…

サステナブル経営と民間経営手法−東京都が中央卸売市場経営指針(案)を発表

今年も桜を見ることができた(21年3月1日) 「東京都中央卸売市場経営指針(案)」が発表された。主要な内容は20年先、2040年代の卸売市場の姿と、サステナブル経営の二点であり、具体的な課題として7点をあげている。(参照 東京都中央卸売市場経営指針) 【20…

公設市場機能と民間機能の共存−成田新市場21年度開業にメド(下)

「全青協」21年02月号より転載、「上」の続き 輸出機能に特化した成田新市場、21年度中に完成する (出所)成田市場の輸出拠点化プロジェクト|成田市 3.公設卸売市場エリアは15%−輸出機能特化の成田新市場 機能優先の卸売市場を具現化 旧卸売市場法の基準…

公設市場機能と民間機能の共存−成田新市場21年度開業にメド(上)

「全青協」21年02月号より上・下に分けて転載する (成田市公設地方卸売市場 経営展望【概要版】11ページ、図表 4-2 新生成田市場の「施設配置」と「7 つの拠点(機能)」より) 改正市場法後の卸売市場は「機能優先の卸売市場とは何か」の課題に直面してい…

グリーン(環境)とデジタル(IT)が政策の柱に−9月「デジタル庁」設立か

撮影:三上市太郎 2021年1月21日〜22日に行われたPJSの全国生鮮流通フォーラム 【冬の特別編】を聞いた。 特に興味深く聞いたのが奥井規晶氏の講演「デジタル化政策の動向」と武田農水省食品流通課長の講演「生鮮食料品流通における協調領域」での「ソサイ…

物流と情報−フィジカル・インターネット

食品流通としての市場流通が、今後、サプライチェーンを構築する上での大きなキーワードとなるのが「フィジカル・インターネット」である。 聞き慣れない言葉だが、今まで繰り返し言われてきた「物流と情報」を一体化した言葉であり、「Physical and Interne…

東都水産のTOB成立−麻生グループ筆頭株主に

豊洲市場の一部上場水産卸「東都水産」(江原恒社長・資本金23億76百万円)に対する麻生グループ「ASTSホールディングス」のTOB(公開買付け)が成立し、東都水産普通株式の36.53%を所有する筆頭株主となった。 ASTSホールディングスは2020年11月9日に東都…

改正市場法と市場施設整備のあり方−サウンディング型市場と物流効率化が焦点に(下)

改正市場法と市場施設整備のあり方−サウンディング型市場と物流効率化が焦点に(上)の続き 3.「サウンディング型市場」とは何か 最近、卸売市場の再整備に「サウンディング型市場調査」の手法が使われ始めている。これは国交省が平成30年に出した「地方公…

改正市場法と市場施設整備のあり方−サウンディング型市場と物流効率化が焦点に(上)

(上下2回に分けて全国水産卸協会の会報「全水卸」2020年11月号に掲載された記事を掲載する) 2020年6月21日に改正卸売市場法が施行され、卸売市場の再整備についても新しい動きが始まった。 農水省の金澤正尚 卸売市場室長は9月に行った講演の中で中央卸売…

神明が東京中央青果に30%出資−神明グループ1300億円で全国3位に

写真右から握手する神明・藤尾社長と鈴木・中央青果社長、吉川・東果大阪社長。この三人が神明青果流通事業の中心となる 神明ホールディングスが東京中央青果発行済み株式総数の30%を取得する。神明の藤尾益雄社長と東京中央青果の鈴木敏之社長が2020年12月…

金沢市中央卸売市場再整備−公設維持・現在地建替え・花き市場編入が前提

コロナ禍の中で、改正卸売市場法を待って動き出した卸売市場再整備が全国に広がっている。卸売市場再整備にあたってのハード面の最大の課題は、PFI(民間資金の導入)である。民間企業からの企画・提案を待って再整備を行うプロポーザル方式は既に一般的に導入…

改正市場法下での市場整備−PFI導入と市場機能・市場外企業の共存

改正卸売市場法が施行されたことで、全国の公設市場で再整備の取り組みが増えています。ざっと挙げただけでも、 中央市場では、広島、姫路、金沢、浜松、川崎北部、奈良、和歌山があり、 公設地方市場では、飯塚、福山、尼崎、千葉、船橋、柏、木更津等の市…

令和3年度予算概算要求事業(2)水産バリューチェーン事業

令和3年度予算概算要求事業(2)として、水産庁関係の予算要求事業の中から「水産バリューチェーン事業」を紹介する。令和3年度予算概算要求額は 1,750(742)百万円。 (出典) 88.水産バリューチェーン事業 〈対策のポイント〉 競争力のある加工・流通構造…

令和3年度予算概算要求事業(1)食品等流通持続化モデル総合対策事業

令和3年度予算に対する農水省の概算要求が明らかになった。全体の概算要求は多岐に渡るので、その中から食料産業局食品流通課関連の概算要求を紹介する。 食品等流通持続化モデル総合対策事業は「新しい生活様式」となっているように、コロナ禍のもとで、特…

農水省組織再編−食料産業局は解体

2020年9月23日、農林水産省は自民党農林合同会議に対し2021年度予算に向けた組織・定員要求の説明の中で、新たに①輸出・国際局、②農産局、③畜産局、の三つの局を新設する組織再編案を示した。年内には決定し、令和3年4月1日からの実施を目指している。…

第22回ジャパン・インターナショナル・シーフードショー〜HACCPの講演を聞く

例年の三分の一規模で行われたシーフードショー 2020年9月30日〜10月3日まで東京ビッグサイトで行われた「第22回ジャパン・インターナショナル・シーフードショー」に行った。コロナ禍で規模・入場者数は例年の三分の一となったが、それでも商談会などの機…

卸売業者が新しい機能を付加するか、あるいは新しい機能を持つ企業が卸売機能を付加するか

卸売市場は集荷と評価、分荷、決済、情報が市場機能の中心である。そして、この「卸売」機能を担う業者が卸売業者であり、この「卸売」機能を効率化するために、I T化や温度管理・保管・加工・配送など市場機能を付加する整備を推進してきた。 ところが、本…

令和2年度食品流通合理化の取組み

食品流通合理化検討会:資料 菅新政権が発足し、コロナへの対応と経済振興の両立が課題となる中で、食品流通もまた卸売市場法の改正に続き、漁業法、水協法の改正によって生鮮食料品の流通は大きく変わろうとしている。 なかでも改正市場法に基づく卸売市場…

卸売市場再整備に「サウンディング型市場調査」導入

サウンディング型市場調査を行う川崎北部市場(168,587㎡)ホームページより (参照)川崎市:川崎市中央卸売市場北部市場の機能更新に関するサウンディング型市場調査の実施について 最近、卸売市場の再整備に「サウンディング型市場調査」の手法が使われ始…

食品流通合理化検討会における市場施設整備の考え方

今後の市場機能はSCM中心(東京大田市場加工・荷捌棟) 前回、パーソナル情報システム(P J S)の「第33回生鮮流通フォーラム」を紹介した。金澤室長が講演した「改正卸売市場法の施行と今後の食品流通の合理化の推進について」は、改正市場法後の市場施設の…